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27.04.2007

白河夜船

日本海に面した町からホタルイカの沖漬けが届きました。う、うれしい。医者から飲酒を止められているわけじゃないので(どういう病人だ)、今夜はこれでしっぽり行っちゃうのだ。

さて、読書備忘録の続き。

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その昔、就職したばかりの私はひどく貧乏で、身銭を切って手に入れた本が面白くないとたいそう腹が立った。だって貧乏だったのだ。吉本ばななが登場し、爆発的に売れたのはその頃だ。ご多分に漏れず、私も単行本を買って読んだ。そして「買って損した」気分になった。貧乏なので支払ったお金が惜しかった。面白くない、というより「損した」という気分が強かった。文庫で買っていたらちょっと印象も違っていたかもしれない。それっきり何年も吉本ばなな(後に『よしもとばなな』に改名)の本を手にすることはなかった(このパターン多いですね)。

面白くないというより損したという気分。これは一体なんだろう。時々吉本ばななのことを思い起こした。でもあまり深く考えなかったのでわからないままだった。そして今回、斎藤美奈子の「文壇アイドル論」を読んで謎がちょっと解けた。でもネタバレはしないので興味があったら本を紐解いてみてください。「文壇アイドル論」は80~90年代に売れた作家とその作品を説いた批評。村上龍と田中康夫についての批評が秀逸です。この斎藤美奈子女史、批評のための批評ではなく、脊髄反射から湧く本能的「好き嫌い」から分析する際の視点がナンシー関のそれに通じるようにも思えます。鼻が利きます。「あほらし屋の鐘が鳴る」のオヤジ論もイイですね。ですが深く掘り下げた「文壇アイドル論」の方が私は好きです。

ちなみに、今回「白河夜船(吉本ばなな)」を手に取ったのは、暁を覚えないこの春の眠気のお陰です。この町では「白河夜船」の状態を「島原さん行く(島原へ行く)」と言うのだそうです。うとうとと夜船に揺られるうちに有明海を越えて島原に着いてしまうわけです。春の吸い込まれるような眠気に誘われて手にした「白河夜船」、さして損した気分にならなかったのは文庫で買ったお陰でしょうか。それとも、私自身が変わったからでしょうか。

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Comments

吉本ばなな、懐かしいですね~(←失礼かな?)
偶然ですが、私は昨日なんとなく本棚の『キッチン』を取り出し、その中の『ムーンライトシャドウ』という作品を再読したんです。これって奇遇ですねー実はちょっとワケあって再読したんですが、でも京丸さんがブログに吉本ばななネタを書いたのは今知ったので、やっぱり奇遇です!
吉本ばななはその昔(たぶん10年くらい前)、大失恋をした時に片っ端から読み漁りました。きっと藁をもすがる思いだったのでしょう(笑) 
その時は損したとか得したとかで本を評価していなくて(っていうかそんな余裕もなく・・・)、とにかく自分に足りないものを知りたい一心でした。若かったから(^^);
今思い起こすと、前述の『ムーンライトシャドウ』以外ではあまり作品の記憶がありません。どんな内容だったのか。『白河夜船』も読んだはずなのに覚えてない・・・
そう思うと、あれほど自分探求の為(大袈裟な私)にたくさん本を読んだのに何も身に付いていなかったのでしょうか?
ちなみに私はほとんどハードカバーで買っちゃいました(笑)
けっこう損してるのかも~
でも、まぁいいや。あの時の苦しさを乗り越えられた値段だと思えば安い、安い!!
今度は「文壇アイドル論」を読んでみたいと思います。

Posted by: Do | 30.04.2007 at 00:14

◎Doさん

Doさんは吉本ばななを随分読んでいらっしゃるのですね。私は今のところデビュー当時の作品(「キッチン」と思う)、「デッドエンドの思い出」、そしてこの「白河夜船」くらいしか読んでません。私も普段はあまり損得で本を評価することはないのですが、当時は吉本ばななの本に「損したー」と思ったのがやけに印象に残ったのでした。ちなみに「デッドエンドの思い出」は結構好きです。

読んだ本の中身を思い出せないこと…えっへっへ、しょっちゅうあります。Doさんと同じく若い頃にのめりこんだ作家の作品もおおむね忘れています(汗)。昨日、本箱が届いて独身の頃からの蔵書を一切合財整理しているところなのですが、同じ本が何冊もあるよ…(汗)。

文壇アイドル論はあの頃流行った作家がどう批評されていたのか、実際どうだったのかがよくわかる面白い批評です。機会があったらぜひ手にとってみてください。今、吉本ばななを読み返してみるのも面白いかもしれませんね。

Posted by: 京丸 | 01.05.2007 at 10:19

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