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03.08.2007

電話

電話のベルが鳴り、仕事の手を止めて見やると見慣れない番号が表示される。受話器を取ると女性の声。「○○○サービスの××です。奥様でいらっしゃいますか?」

仕事に集中している時に限ってこの手の電話がかかってくる。知らない人、それも私が必要としてない事情で私の仕事の邪魔をされる筋合いはない、と少しムッとして「どちらにおかけでしょうか」と質問してみる。私の言葉に畳みかけるようにその明るい声はなかば必死に布団のメンテナンスについて語り続ける。延々と。

とうとうと流れるセールストークが切れたところで「おかけ間違いだと思います」と言って受話器を置く。我が家の電話番号は電話帳に載せていないので、かかってくるとすれば番号順にかけているか、流出した個人情報を使ってかけているかのどちらかだ。いずれにせよ、私が求めている電話ではないのだ。

いつからだろう。電話のベルをあまり嬉しく感じなくなったのは。

少し前まで、電話のベルが鳴ると嬉しかった。それは遠くに住む母の声や、友達との楽しいひととき、恋人と共有する時間を届けてくれるサインだった。ベルを鳴らしてくれない恋人(オット)をうらめしく思ったりもした。電話線を通して語り合う時間は楽しかった。

それがいまや、我が家にかかってくる電話は仕事の依頼か、こうしたセールスばかりになってしまった。長電話をするのはもはや妹くらい。ご無沙汰していた友達から電話がかかってきた、と喜ぶも束の間、それは選挙のお願いだったり、勧誘だったりして肩を落とす。そうでなければ、久しぶりにかけてくれた電話に一瞬ぎょっとしてしまったことを思い出して落ち込んだりする。

そして、声を聞きたい友達ほど、いつも忙しくている私の状況を慮って電話をかけてくることがなくなった。私自身も、大切な人であればあるほどにその人の状況を色々と考えて、電話という手段を取れなくなってしまった。せいぜい贈り物を頂いたときにお礼の電話をかけるくらいだ。

私たちは電話に代わってメールという手段も手に入れた。確かに、メールは便利だ。相手の時間を強引に奪うようなことはない。営業電話のようなスパムメールを無視しても即効削除しても気がとがめることはない。

でも、メールじゃ伝わらないことがあるんだ。私は、本当は大事な人の声を聞きたいと思っているのだ(その割には、電話だとやけに緊張してうまく話せなかったりするのだけれど)。

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Comments

そういわれてみれば、固定電話ってほとんど使わなくなったなー。
かかってくるのはセールスの電話か、母か夫からの電話。
昔は友達と長々と電話したものだけど、今ではほとんどメールですね。
そういえば、手紙も来るのはDMばかり。
どんどん人との繋がりがデジタル化されていくような気がします。
でも私は手書きの手紙は結構好きで、きれいな絵葉書などを買い集めてお礼状に使ったりしてます。

私も仕事中にかかってくる電話会社(大抵は代理店)からのセールス電話には、ほとほと手を焼いてますよ~。

Posted by: みなみ | 03.08.2007 at 12:30

◎みなみさん

みなみさんのコメントを読んで、自分がいかにアナログの人間であるかを再確認しました。私もやっぱり手紙や葉書が好きだし、メールよりも電話や手紙の方がずっと伝わるような気がするのです。相変わらず分厚い手帳を持ち歩いているしね。

セールスの電話って、特に奥様向け電話は、受ける側からしてみればスパムメールと同じ類に感じられるのだけれど、かけている側はそう思ってないところが問題だよね。いまだに売上貢献に電話という手段が使われていることに、ちょっと驚いてしまうのでした。

Posted by: 京丸 | 03.08.2007 at 17:13

はっはっはっ!うちも、同じ。
電話は殆どなりませんね。
何しろ、留守電を解除しません。
帰宅しても、留守電のままにしておきます。
用事がある人は、留守電に向かってメッセージを残そうとしますから、その時点で受話器を上げます。
ナンバーディスプレイ、ウチも雇っていますので、知らない番号だったら出ませんね。

そして・・・ウチの実家は、姉は携帯を持っていますが、父も母も持っていないし、パソコンメールもしない。。。
なので、両親との連絡のやり取りは、電話であり、手紙です。
母は、手紙を書くのが好きなので、私が捕まらないとわかれば、必ずや葉書で連絡をよこします。(携帯には電話をかけてこない。キライなんだって。)
古典的な方法ではありますが、出す方ももらうほうも、嬉しい方法かも知れません。

実家にいた頃、セールスの電話に対しては、色々いたずらしました。
お墓の勧誘だったら、父を寺の坊主にしたて、土地やマンションの売り込みだったら、父を開業医にしたて転居できない事にし・・・そうやってウチの父は、弁護士や不動産屋などに転職し、私の電話を後ろで聞いている母は、社長夫人に変身したりしながら大笑いしていました。

今かかってくる電話に、
『奥様ですか?』と聞かれれば、きっぱりと『違います!』と答えます。
だって、ワタシ、正真正銘ハナの独身だもの。

あ、話がそれましたが、最後に。
メールじゃ伝わらない事がある。確かにそうですよね。
好きな人への告白は、メールにするか、電話にするか、というはなしを、少し前に職場仲間とした事を思い出しました。
ダイヤル式に公衆電話が懐かしい・・・そういう話でまとまりましたよ。

Posted by: 海実子(みみこ) | 03.08.2007 at 21:05

◎海実子さん

嬉しい電話のベル、鳴らなくなりましたね。そして、郵便受けにもあまり手紙が届かなくなりました。電話や手紙が大好きなのに。

でも、やっぱり手紙や電話というコミュニケーションの楽しみはずっと残っていて欲しいですね。遠く離れてなかなか会えない人とも、息遣いが聞こえるようなやり取りをしたい。メールもそりゃ確かに嬉しいんだけどね。手軽な手段よりも、手間のかかったもののほうがやっぱり嬉しいのです。

告白は公衆電話で。うん、昔はそうだったね。親の目を盗んで夜の公衆電話からかけるのが普通でした。でも私にはきちんと告白した覚えがないのです。いつの間にかつきあってたというなし崩しパターンです。

Posted by: 京丸 | 04.08.2007 at 13:41

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