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20.02.2008

東京マラソン2008完走記

とうとうこの日がやってきた。できればやってきて欲しくなかった。知らない間にとっとと終わって欲しかった。2008年2月17日、東京マラソン。

Img_1559_3去年の東京マラソンの後、体調を崩して走れなくなった。数ヵ月を経てようやく走れるようになったと思ったら、故障が続いた。次々詐欺のように、痛めては治り、治っては痛めるを繰返して、ロクに練習できなかった。私の故障は頑固だった。膝の次は股関節、そしてアキレス腱。これでもか、これでもかと試されているような気分だった。走れない焦りから何度か涙をこぼした。10月に東京マラソンの抽選に2年連続で当選した時も、喜びよりも焦りの方が大きかった。今思えば10月に焦るだなんて笑わせてくれる。結局、本番までの最長練習記録は7km、それも1回こっきり。本番の1週間前になって初めてようやく痛みなく走れたのだ。遅すぎるにもほどがある。

Img_1563_3 そして、その日はやっぱりやってきた。初マラソンを走る妹と都庁で落ち合う。妹は風邪を引いていた。姉妹二人で歩道橋の上からどんよりとスタート地点を眺めた。体調が悪くなったら棄権することを互いに確認した。だけど、ぶっつけ本番で臨むフルマラソンがどんなレースになるのか、想像すらできなかった。

3万人のランナーが走り出した。ほどなくして長く辛いレースが始まった。

Img_1569_3 股関節には早々に違和感が発生した。その違和感がすぐに痛みに変わることは想像に難くなかった。だけど一緒に走るつらそうな妹の顔を見ると、心配はかけられなかった。ちょっとだけお姉さん風を吹かせて背筋をしゃんとして走る。だけど本当のことを言うと2kmの表示を見た途端、ええええっまだ2km?と不安になった。だけど妹を心配することで逆に私は助けられていた。どうにか10kmを通過した。

Img_1573_210kmを過ぎた頃に妹はトイレに行くという。待たないで欲しいと懇願するので、そこで別れる(ひどい姉だな)。そして一人になった途端に力の入らなくなった脚に、妹と一緒に走るということがどれだけ力になっていたのかを知るのだった。

股関節はギシギシと痛み、脚は上がらなくなった。幾度となく足を止めて入念にストレッチする。そして何回目かのストレッチの後で痛みに耐えられず歩いてしまった。「棄権」の二文字が頭の中をよぎる。ハーフの距離まで到達した時、これまでと同じ距離が残っているのかと思うと途方に暮れた。脳みその中で「ドナドナ」のメロディが流れ続けた(註:子牛が車に乗せられる様子が収容車に乗せられるランナーに似ているので、収容されることを「ドナドナ」というのです)。

Img_1575何度か走ったり歩いたりを繰返した。気づくと沿道からずっと応援の声を受けていた。 声をからして激を飛ばしてくれるボランティアの方々。仲間たち。縁もゆかりもないランナーに声をかけてくれる沿道の人々。駆け寄って「あなたこれをなめなさい」と飴を手渡してくれた女性。がんばれと声をあげる子供たち。その人たちの前でやっぱり歩けない、あきらめられない。このままだとひょっとするとドナドナかもしれない。でも自分からこのレースに幕を下ろすのはやめよう。いけるところまで、限界まで走ってみよう。そして私は再び腕を振って走り始めた。

Img_1577走り出した私は、どんなに歩幅が狭くとも、どんなにゆっくりでも、歩くより走る方が楽なことを知った。ひょっとするとそれは錯覚で、歩くことへの罪悪感から開放されただけだったのかもしれない。つらくても走っているという自己満足だったのかもしれない。実際に、前を歩く人を追い越せないほどのゆっくりペースだった。それでも私は走っていた。

気づくと「良い笑顔です!」と沿道から声をかけられた。不思議と私は笑顔だったようだ。ひょっとすると沿道から見た私は滑稽で不気味だったかもしれない。でも私は笑っていた。だけど、顔は笑っていても脚は全然あがっていなかった。腕の力だけで身体を動かしているような気分だった。それでも一歩一歩足を進めると、ゴールは少しずつ、でも確実に近づいた。痛みとは裏腹に、不思議と嬉しさと喜びに私は満ちていた。35kmを過ぎた頃「もうドナドナの心配はないようだ」といささか判断力に欠けた頭でぼんやりと感じた。

Img_1565そして、ゴール。幸せだった。遅くても、痛くても、あきらめなかった自分が少し誇らしく思えた。長い故障と闘った日のことを思った。あの日々と比べたら、フルマラソンを走れるだなんて夢のようだ。励ましと応援をくれた友の顔、故障と不安を抱きながら同じレースを走った友の顔、抽選に外れて沿道から応援をくれた仲間の顔、妹の泣きそうな顔、大丈夫だよと送り出してくれたオットの顔、沿道の顔、顔、顔。いろんな顔が頭の中をよぎり、視界がぼやけた。いろんな人の支えがあって、ゴールができた。支えられたことが嬉しかった。こうして、つらかった東京マラソンは私の宝物となった。これから先、私は折りに触れ、あきらめなかった自分のことを、いろんな人に支えられたことを励みに思うに違いない。

あの日、真っ青に澄み渡る東京の空の下を走れたことを幸せだとしみじみと思う。この青い空を思い出すたび、また胸に熱いものがこみあげるだろう。

そしてこの東京マラソンが私の再スタートとなった。苦しかった1年間がこの東京マラソンとともに終わり、新しい一歩を踏み出すことになるはずだ。

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Comments

東京マラソン2008 お疲れさまでした。

感動しました。いい完走記です!

Posted by: ヤマシュウ | 21.02.2008 at 06:12

本当にお疲れ様でした。
長時間のラン&ウォーク、大変だったでしょう。
でも、声を涸らして応援し続けてくれる沿道の人達や、大勢のボランティアスタッフの人達に助けられたのはこちらも同じです。
そして、42.195キロは長い様で終わってみれば短い。
その時は痛みで堪らなくても、今ではもっと続いていても進めたと思いませんか。
次のマラソンをいい想い出を作る為にも、ゆっくり休養して再スタートを切って下さいね~(^^)

Posted by: AKA | 21.02.2008 at 10:21

完走記読ませていただきました。この1年、京丸さんがどんな時を過ごしたのか、ほとんどわかっていない私ですが、「苦しかった1年間がこの東京マラソンとともに終わり、新しい一歩を踏み出すことになるはずだ。」という部分にとても共感しました。自分もまだ薬と縁が切れない生活が続いていますが、走ることだけは続けようと思ってます。
走り続けた京丸さんのガッツ、本当に素晴らしいです。
完走おめでとうございます。同じ大会を走れたことをとても嬉しく思います。
素敵な完走記をありがとうございました。

Posted by: Fumiko | 21.02.2008 at 20:21

お疲れ様。
故障で走れてないようだったので心配してたのですが頑張りましたね!
諦めずに最後まで走ったのは素晴らしいです。
私も故障に負けてられないですね。
それから姉妹でマラソンを走るのってなんかいいですねぇ。

Posted by: hisa | 21.02.2008 at 20:59

走るほうが楽だったというのは、
錯覚じゃないような気がする。
私も攣ったときに、歩くのはやめた。
歩くと動けなくなる気がしたから。
なんでだろ、やっぱり走るほうが楽な気がする。
錯覚じゃないと思う、本当に。
京丸さん、笑顔でえらい! 
私はポイントは笑顔でがんばったけど、
苦痛でゆがんでいたときもあるもん。
ゴール後は、京丸さんのほうがずっと元気だったね~。
楽しかった。快晴で本当にラッキー。
沿道の応援、一生忘れないよ。私も。

Posted by: とだひ | 21.02.2008 at 21:03

京丸さん、短い時間でしたがお話しすることができて嬉しかったです♪
苦しい中での完走、おめでとうございます&お疲れ様でした。
いつか、一緒にレースを走りたいなぁ。その時は宜しくお願いしますねっ♪

本当に素敵な完走記でした。

Posted by: マサ | 21.02.2008 at 22:28

読ませていただいて、涙が出ました。本当にお疲れ様でした。
一人ひとりの思いが詰まった大切な一日だったということがしみじみと分かりました。
そして、その時間を共有することができた幸せも(お会いすることもお話しすることもありませんでしたが)。
次に向けての「新しい一歩」素敵ですね。私も。


Posted by: つー | 21.02.2008 at 23:35

当日の空は、本当にこんなに青かったですか?
海実子は海の青が好きですが、空の青も大好きです。
空を仰いで、こんなに真っ青だったら、きっと涙が出ていたと思います。
私も、こんな青空を見上げて、東京マラソンを走りきった京丸さんと妹さんを、思い出すと思います。
次はきっと、皆で青空の下、ゴールを目指しましょう。
お疲れ様でした。

Posted by: 海実子 | 22.02.2008 at 00:44

◎ヤマシュウさん

応援してくださってありがとうございました!完走記ってダメダメな自分もさらけ出してしまうので、ちと恥かしいですね。読んでくださってありがとうございます。

◎AKAさん

フルマラソンは、要した時間が長いほどしんどいという法則を見つけました(笑)。ですがしんどい時ほど応援が心に沁みます。そして仰る通り、終わってみるとフルマラソンは終わってみると短く感じられます。どんどん辛かった記憶が抜け落ちて、楽しかったことばかりが記憶に残ります。何だかお産みたいです(経験ないですけれど)。

私の欠点は先を急ぎすぎること。実は昨日ちらっと走ってしまいました。もう少しゆっくり休養して、身体を万全に整えて再スタートを切るとします。AKAさんもお疲れさまでした。あのレースを共有できたと思うと感慨深いです。ゆっくり休養されてください。

◎fumikoさん

fumikoさんもつらい時をお過ごしだったのですね。東京マラソンはfumikoさんにとっても、きっと新しい一歩の足がかりとなったことでしょう。フルマラソンという非日常的な体験は、人に色んなことを教えてくれると感じました。事前の準備で、そしてレース本番で自分と向き合い、多くを学びますよね。fumikoさんも私も、みんな、きっと一皮むけて違った自分になっているはず。

このレースを仲間と一緒に走り共有できたこと、本当に嬉しいです。走り続けて、また同じレースを体験しましょう!

◎hisaさん

ご心配をおかけしましたが、どうにかゴールできました。ありがとうございました。今回、体力が全然ない中での出走でしたので、マラソンはメンタルのスポーツなんだなと感じました。

姉妹でマラソン。思いのほか良かったです。何だか絆が深まった感じです。年に1回くらいは一緒に走りたいね!と既に次のレースを計画中です。

故障はつらいですが、必ず治ります。養生なさってくださいね!

◎とだひさん

本当に歩くよりも走る方が断然楽に感じたんだ。全然進まなくて、前を歩く人を追い越せなかったんだけどね(笑)。走る方が衝撃があるのに楽なのは不思議だよね。

実は「いい笑顔」と言われた後、どんな顔してるんだろうと自分の写真を撮ってみたら、やっぱり笑ってました。今、冷静に考えるとやっぱり不気味。ランナーズハイだったのかもね。

このレースを走れたこと、本当に幸運でした。一生心に残るレースとなりました。

Posted by: 京丸 | 22.02.2008 at 07:24

◎マサさん

マサさん、いらっしゃいませ!当日はボランティアと応援をありがとうございました。たくさんの方々に支えられて初めてランナーは無事に走ることができるんだという思いを改めて強くしています。感謝しています!

それから宴会でお会いできてよかったです。以前まっちさんのところからマサさんのブログに伺い、実はコソっとお邪魔しておりました。本当にいつか一緒にレースを走りたいですね。石垣にします??その日が今から楽しみです。ちなみに今日からオットは社員旅行で沖縄に出かけました(羨)。

これからは堂々とブログにもお邪魔しますね。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

◎つーさん

いらっしゃいませ! ダメダメ~な自分もすっかりさらけ出した完走記ですのに、読んでくださってありがとうございました。いや本当に、参加したランナーひとりひとりにストーリーがありますよね。

つーさんも同じ東京の空の下を「初フル」として走られたんですね。完走おめでとうございます。あのレースを共に走ったと思うだけで、ぐっと距離が近くなったように感じます。初フルの東京マラソンはつーさんにとってまさに新しい一歩となりましたね!

実はみなみさんのブログでつーさんのお名前は拝見していました。これから仲良くしてくださいね。どうぞよろしくお願いいたします。

◎海実子さん

青かったんですよ、空が。泣けちゃうくらい。スタートして見上げた空が青くて、つい1枚撮った写真がその都庁の写真です。そして画像を見るだけで、また泣けちゃうわけです。涙腺ゆるんでます。

さあ次は海実子さんと一緒に走る番です。海実子さんとレース体験を共有したい。そう思います。復活作戦、ご一緒くださいね♪

Posted by: 京丸 | 22.02.2008 at 08:01

大雨の東京マラソンから1年
本当にいろんな闘いがあったと思います
その、頑張りを見てたかのような
讃えるかのような、そんな青空でしたね。

素敵な完走記ですね
読んでて、涙がじんわりでてきちゃいました
あの、素敵なレースに、京丸さんと同じレースに
参加できたこと。本当に嬉しく思っています。

4万人もの人の中、偶然にも出会えたあのご縁
今後ともよろしくお願いします♪
石垣島もチェック始めます♪

Posted by: みんみん | 22.02.2008 at 09:35

◎みんみんさん

あれから1年。ほんと色んなことがありました。そんな中、折々に励ましてくださってありがとうございます。ようやくフルマラソンでゴールできるまでに帰ってきましたよ。って銀座ですっかり励まされちゃったんですが。

くたびれた時、やけになりそうな時、頑張れない時には、あの青い空を思い出すことにします。みんみんさんとあの同じ青い空の下を走れたこと、本当に嬉しいです。そして、何度も何度も顔を会わせたそのご縁にも感謝してます。こちらこそこれからもどうぞよろしくお願いいたします。

さあて。次の目標に向かってそろそろスタートしなくちゃね。石垣島ふふふ私もチェック始めましたよ♪

Posted by: 京丸 | 22.02.2008 at 19:00

去年の東京マラソンが終わってから、今年の東京マラソンまでの1年間のことを思うと、本当に京丸さん!あなたはがんばった。
私、正直言って7kmしか走らずにフルマラソンなんて走っちゃって大丈夫なのだろうか?ってずーっと心配だったんだ。
だから、電話をかけたときに「あと1kmだよー!」って聞いた時は、「すごい、信じられない、すごい!!」ってもう頭の中は真っ白だった。
本当におめでとう。自分の完走よりずっとずっと嬉しかったです。
京丸さんのパワーをもらって、私も頑張らなきゃって思ったよ!!

Posted by: みなみ | 22.02.2008 at 22:32

京丸さん、素晴らしい完走記をありがとう。一番心配だった京丸さんが無事ゴールできたのが、今年の東京マラソンでの一番嬉しい出来事です。そんな京丸さんと今年も一緒に東京を走れたことを僕は誇りに思います。

さあ、新しい一歩を踏み出しましたね。「ROAD TO トルコ料理 in NYC」へ(笑)。

Posted by: まっち | 22.02.2008 at 22:55

完走おめでとうございます!
今回の東京マラソンのお友達ランナーの中で一番心配だったのが京丸さんでした(ごめんね~)
なので13km地点で応援に行ったのに逆に声を掛けてくれてすっごく嬉しかったです。あの、可愛らしい声を久しぶりに聞けて良かった。ショートヘアは一瞬誰か分からなかったけれど・・・(笑)
次にお会いできるのはNYかな??再会を楽しみにしていますね。

Posted by: Do | 22.02.2008 at 23:06

追伸 つーさんは「同盟メンバー」ですよ~♪

Posted by: みなみ | 22.02.2008 at 23:48

◎みなみさん

練習で頑張れなかった分、本番でどうにかつじつまを合わせることができました。タイムは別としてね。

私も正直言って、こんなにぶっつけ本番のレースがどんなものになるのか、想像もできなかったよ。完走できるとも思っていなかったの。普通に走れたのは10kmくらい。残りの30kmは気力だけで走ったという感じです。でも人間、気力さえあれば大抵のことはどうにかなる、とも感じました。大きな収穫です。

みなみさんには本当に心配をかけました。ずっと励ましてくれてありがとう。みなみさんの励ましがなければ私はゴールできなかった、としみじみ感じています。当分タイムについては私の分まで頑張ってください!頼むよ~。

◎まっちさん

ご心配をかけてしまいました。ゴールの後、うるうるしていた時にまっちさんからメールを頂いて、私の涙の堤防は決壊してしまいました。心に沁みました。ありがとうございます。仲間の存在の有難さをしみじみ感じました。

さあ、次のゴール、NYCのトルコ料理屋に向けて(ん?)、また新たに頑張りましょう!

◎Doさん

ありがとうございます。ご心配をかけてしまってすみません。何だか皆さんに心配かけていたのですね(反省)。

Doさんとお会いした三田あたりは、一人旅になって既によれよれになり始めた時でした。だからめちゃめちゃ嬉しかったです。ショートヘアにしたこと、ちゃんと話しておけばよかったよね。豊洲では誰からも認識して貰えなかったし、びっくりさせようなんて考えは甘かったです(汗)。

次は遅くともNYCだね。そろそろ準備を始めましょう~♪楽しみにしています!

◎みなみさん

うわっ、本当だ(←確認してきた)。ということはイケる口でいらっしゃるんですね。同盟の方と聞くと「一緒に飲みたい」と思ってしまうのは、まさにアイロニー(笑)。

Posted by: 京丸 | 23.02.2008 at 14:29

かなり感動して、今PCの前で泣いてしまいましたよ。
そんなに大変な状態で臨んだ大会だったのですね。
あらためて、完走&感動おめでとうございました。♪

ケガってつきものだけれど、うまく付き合って行けば
何とかなるのかも?なんて最近は考えてます。

来年はランナーとして参加したい「2009東京マラソン」っ。

Posted by: ふっきぃ。 | 27.02.2008 at 09:05

◎ふっきぃ。さん

読み直してみると何だか熱いですね、私。ちと恥かしい…。ですが、ゴールの喜びは今もじわじわと続いています。

私は故障が多く、走っている時よりも故障してよろけている時の方が長いのですが、ふっきぃ。さんがおっしゃるようにうまくつきあったうえで長~く走っていきたいなと考えてます。

来年は一緒に走りましょう!「東京マラソン」(当てましょう!!)

Posted by: 京丸 | 28.02.2008 at 08:45

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