01.08.2009

2009年7月

気づくと7月も終わっていた。はぁ~早いね。旅をした1ヵ月は濃厚だったけれど、普通の1ヵ月の何と希薄なことよ。おまけに一向に梅雨明けせず雨続きだったため、ほとんど外出せず家の中で過ごしたのでした。

怒涛の旅(実は6月にはトルコ以外にも小さい旅に出た)の後はすっかり呆けていて、充実していたのは読書だけ。7月の読書は下記の21冊、5487ページ。読書の他にないのか。ない!

てのひらたけ (高田 侑)
人は出会った人と別れ、手に入れたものを失い、喪失感とともに生きていく。そう思っていた。だからなのか、この本に収められた四つの短篇すべてに心をぎゅっと掴まれ、強く揺さぶられた。会えなくなってしまった大切な人に、これからまた会えるのかもしれない。失ったものも生き続けるのかもしれない。この作品はそう思わせてくれた。あああ、何だか救われた。

夜想曲集:音楽と夕暮れをめぐる五つの物語 (カズオ・イシグロ/土屋政雄訳)
えええっこれがイシグロ?という意外さ(何てったって爆笑した)と、いつものイシグロの美しくも哀しい世界の両方を楽しんだ。いや、イシグロの物語にはいつもほろ苦い可笑しさがこっそり埋め込まれているのだけれど、今回はその可笑しさ部分のパワーが増していたのかな。流れる音楽のように心地よい文体が、夕陽の落ちかけた街のカフェを思い起こさせ、心に旋律を響かせる。切れかかった絆は、そして途切れた夢は物悲しい夕暮れそのものだった。大笑いした後、切なさに少し苦しくなる。

フエンテス短篇集 アウラ・純な魂 他四篇 (岩波文庫) (カルロス・フエンテス/木村栄一訳)
素晴らしかった。すっかりよれよれだ(ほめてます)。「アウラ」老いと若さ、醜と美、生と死。対照であり表裏一体の二人の間を迷い惑う「君」の見る世界が細部まで微妙に怖い。土台となった「雨月物語」を再読したい。「純な魂」独白される兄への愛。次第に狂気を帯びたその愛の結果は。フエンテスの辿った経歴からこの物語の背景を解く木村氏の解説もとても興味深い。「最後の恋」「女王人形」も良かった。ああ、全部いい!「チャック・モール」は既読。この夏はラテンアメリカなのだ。

ロング・グッドバイ (Raymond Chandler Collection) (レイモンド・チャンドラー)
妄想に振り回されてよれよれになったり、話のオチが見えなくて考え込んだり、日本人文筆業従事者が書いたとは到底思えない訳文に歯を食いしばったりすることなく、ストレートに読書を楽しみたいとこの本を選んだのは正解だった。プロットにぐいぐいと引きずり込まれ、文章の細部にほれぼれする。長い夢を見ているようだった。マーロウはクールで、嫌味が絶妙で、腕っ節が強く、美女にモテモテだけど簡単に据え膳は喰わないし、金に屈して信念を曲げるようなことはなく、ほどほどにどん臭い。読者はメロメロだ(たぶん)。

本の雑誌 314号

河童 他二篇 (岩波文庫) (芥川竜之介)
河童の世界は現社会を痛烈に風刺し批判しているはずなのだけれど、河童の世界は理想の社会などではなく、やはり生きづらいのだった。奇妙で滑稽だった河童の世界と現世界との境界線が次第にぼやけあやふやとなり、人間社会と重なり合ってくる。河童の世界を生きづらいと感じている河童たちの姿は、人間そのもの、芥川であり、自らを嘲り笑っている。両世界のはざまで迷い戸惑う主人公もまた芥川であり、人間そのものだった。

あまりにも騒がしい孤独 (東欧の想像力 2) (ボフミル・フラバル)
不思議な物語だった。35年間にわたり古紙プレスを生業とするハニチャ。古紙は思想と文学だけでなく、腐った段ボール、血のついた肉蠅、そしてネズミをも含んでいる。雑多な古紙の中からハニチャは本を拾い上げる。こうした醜悪なものと美しいものは古紙だけでなく、物語全体に混在していて対比をなす(あまりの汚さにぎょえー、なのだ)。物語は不条理な妄想や幻想、チェコの社会的背景など多様な要素を含んでいて、時に右往左往する。ビールで酔っ払ったような読後感。

いずれは死ぬ身 (アメリカ文学短編集・柴田元幸編・訳)
表題からして心にさざ波を立てる。そして作品全体にこの「いずれは死ぬ身」というイメージが微妙にニュアンスを変えつつ、重なり合う。表紙も美しい。お気に入りは「ペーパー・ランタン」ダイベック、「ジャンキーのクリスマス」バロウズ、「冬のはじまる日」パンケーク、「遠い過去」トレヴァー、「自転車スワッピング」マクロフラン。短篇それぞれの題名だけを見ても訳の妙をしみじみと感じる。

豚の死なない日 (白水Uブックス―海外小説の誘惑) (ロバート・ニュートン・ペック,金原 瑞人訳)
「豚の死なない日」というタイトルはそういう意味だったのか。ひょっとすると動物でお涙頂戴なのかとびくびくしながら読み始めたのだけれど、この作品はそこまで単純な物語ではなかった。この飽食の時代に、大地に根ざし質素な生活を土台としたシェーカー教徒の家族の物語は、真に豊かな生活とは何か、生きていくために必要なこととは何か、幸福とは何なのかを問いかける。アメリカで売れたのもうなづける。蛇足だけどYAというカテゴライズの意味がよくわからない。そもそも文学にそんな細分化が必要なのか。

世界文学は面白い。 文芸漫談で地球一周 (奥泉 光,いとう せいこう)
前日ゴーゴリ「外套・鼻」を読んだのはこの本を読みたかったから。先日読んだ「予告された…」の項を読んだところそれはそれは楽しく、「外套・鼻」もぜひとも先に読まなければ!と思い至ったのです。いやあ全編笑わせて頂きました。特に前出の2冊は読んだばかりで記憶に新しく、いちいち膝を打ち、大笑い。他にも「変身」はツッコミどころ満載、「坊ちゃん」のすっとこどっこいっぷりに驚き、「愛人」では読み逃していた視点に気づく。収録された本は有名で薄い文庫ばかり。全作読み直してまたこの本で大笑いしたい。

外套・鼻 (岩波文庫) (ゴーゴリ)
ロシア文学は寒くて辛くて小難しくて眉根を寄せて読むものだと勝手に敬遠していたけれど、この作品は眉根も寄せず楽しく読んだ(寒かったけど)。突拍子もない事件、小学校レベルの職場、外套買って大祝賀会、興奮しまくる主人公、逮捕されそうになる幽霊、服を着て逃亡をはかる鼻(チケット買うなんて!)。んもう馬鹿馬鹿しいのだ(ほめてる)。そしてさらには奇想天外な出来事について言い訳したり、さじを投げたり、どうでもいいことをたっぷり説明したりする語り手。中途半端な幻想っぷりがゆるくてイイ。訳も素晴らしい。

オレンジだけが果物じゃない (文学の冒険シリーズ) (ジャネット・ウィンターソン/岸本佐知子訳)
タイトルに深い意味が。狂信的キリスト教徒としての自分はクラスメイトから浮き、同性愛者としての自分は信仰の現場や母親からも乖離する。どこまで行っても異端者だ。異端者を作り出した根源であり自らも異端者である母親が「オレンジだけが果物じゃない」と述べ、その実、全く変わってないという事実はアイロニーであり可笑しい。異端者としてのおかしな自分とおかしな周囲を見つめる冷静かつ淡々とした語り口のお陰か、この自伝的物語は悲劇的でも自虐的でもない。時折挿入される寓話が読者の思考をぐらつかせ効果的に主人公の苦悩を表現する。

遠い女―ラテンアメリカ短篇集 (文学の冒険シリーズ) (フリオ コルタサル,オクタビオ パス,カルロス フェンテス,フリオ・ラモン リベイロ,アルフォンソ レイエス)
揺らぐ。揺らいでいく。足許が、視界が、思考が、世界が。幻想と妄想に満ちた南米の短篇小説集。脳がぐらぐらと揺らいでいる。分身を見つめる自分、分身を感じる自分。乾いた眼差しに硬直する私。すえた匂いと鮮やかな花の色、陽射しの痛い南米の街に意識は迷い込む。この不思議な物語に私は捉えられる。

昏き目の暗殺者 (マーガレット アトウッド/鴻巣友希子訳)
2000年ブッカー賞&2001年ハメット賞をW受賞。読んで納得。ああ、アトウッド素晴らしい。5年も積んでた私はばかだ。ブルジョア家に生まれ嫁ぎ果ては独居老人となったアイリスの独白による一家の壮大なサーガ。妹ローラの書いた物語が挿入され、その物語の登場人物がSF物語を語る。そしてさらに挿入される新聞記事。入れ子になった物語の数々が終盤、一気につながってひとつの絵をなし、「昏き目の暗殺者」が意とするものが明らかになる。息を呑む。個人的にはアイリスの意地悪ばあさんっぷりがお気に入り。訳もいい(読点の多さを除けば)。

本の雑誌 312号
海外文学特集。旅行中に発売されていたのでバックナンバーを密林で入手。舐めるように読む。海外文学愛好者は少数部族なのだそうだ。そして鴻巣さんの読書量に驚く。読みたい本にアンダーラインを引いたら本がまっ黄色になった。本の雑誌社はちょっと大変らしい。がんばれ!

サキ短編集 (新潮文庫) (サキ)
帯によると「O.ヘンリの最大のライバル」なんだそうだ。知らなかった。O.ヘンリと比べるとブラックな皮肉や風刺に富んでいて、むしろO.ヘンリよりも好み。この作品集には最後の一行でやはり唇の片端で「にっ」と笑える短篇が揃っている。ぴりりと辛い山椒、21粒。サキの短篇は135篇あるのだそうだ。解説にあるグレアム・グリーン選「サキ傑作集」や岩波文庫のサキ短編集(絶版)も探してみたい。

ヴェニスに死す (岩波文庫) (トオマス・マン)
最後に恋をしたのはいつのことだったろう。すっかり忘れていた。恋は熱く甘美だけれど、恋に堕ちると人は無様、姑息、執拗で脆弱、そして愚かになってしまうことを。だけどそれが恋の醍醐味であることを。この本を読んで、初老であろうと相手が誰であろうと、そんな恋に陥ることができるのだと思い至る。もう一度、無様で愚かな恋に堕ちてもいい。訳は絶賛されているけれど、ダメだと思うよ。

本当はちがうんだ日記 (集英社文庫) (穂村 弘)
このエッセイがやけに面白いのは、心の中に共通の「ほむらくん」を持っているから。自分にだけあだなのない不安、切羽詰まるほどに狂ってしまう優先順位、いくつになっても「大人になったら」と夢想する現実味のなさ(および現実に直面した時の驚愕)などなど、あるべき(と思われる)場所から遠く乖離しうろたえる「ほむらくん」度が高ければ高いほど面白さが増すのだ。私の「ほむらくん」度もかなり高いのだ、と思う。

翻訳文学ブックカフェ (新元 良一)
海外文学は訳者というフィルターを介して提供されるため、訳者がその作品の良し悪しを大きく左右する。だから素晴らしい海外文学を読むと逆に訳者にも興味が湧いてくる。この本には12人の訳者の作品への思いや、文学体験などが詰まっている。海外文学を読み始めて日の浅い私にとっては海外文学読書の指南書であるうえ、比較的新しい海外文学の訳者の話なのでそこそこに既読本もあり、訳出時のエピソードにも触れることができて何度読んでも楽しい。

空中スキップ (ジュディ・バドニッツ/岸本佐知子訳)
表紙と題名のお陰で手に取る機会を逸していたけれど、この短編集は唇の片端に笑いのこぼれるシュールな面白さ、突飛なようで実は誰もがこっそり抱きそうな妄想、非情な心の動きや意地悪なオチなどなど、ちょっと毒のある黒い魅力がいっぱい詰まったパンドラの箱のよう。どの話もそれぞれに異なる魅力があり面白く、すっかりとりことなりました。あぁ、パンドラの箱、開けちゃった。

(アンナ・カヴァン)
硬く冷たい物語。死もしくは終末、ひょっとすると究極の愛のメタファとしての氷が静かな地響きとともに迫り来る。カフカの物語の持つ不条理にも似て、断片的に挿入される妄想に翻弄され、歪むストーリーに迷い、少女(とその心)になかなかたどり着けない「私」の遠い道のりに心乱される。強烈な印象を残す一冊となった。

いやん、どっさり。ほとんど当たりでした。ヒット率高し。8月はあれこれ忙しいので激減しそう。ラテンアメリカの夏だってのに。くすん。

そして、休肝日はゼロです。ゼロ。だめだなー。ちなみ今朝は二日酔いです。反省。

8月の目標。10冊は読む。休肝日も10日(弱気)。ブログもまめに更新する。  そして、8月末にぼやかない

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01.05.2009

4月

Img_2631 GWに突入し、気づくと5月。だまし絵を見るかのように暦の進みは早い。確実に木々は新緑の芽を吹き、野菜は蔓を伸ばし、花は香り高くなっている。季節の移ろいに私が気づいてなかっただけなのかもしれないな。

4月はストレスフルな1ヵ月だった。色々とやること思うことが多かったので体調も今一歩だったし、読書もあまり進まなかった。4月の読書は10冊10作品。集中力に欠くと途端にペースが落ちてしまう。 ここのところ読了本を羅列するばかりで感想を書いていなかったので、時には感想も書いてみるかな。Photo_2

「海 (小川洋子)」 (新潮文庫)

2006年に出版された短編集の文庫化。短編でも小川洋子の描く世界は静謐で美しい。老人と子供のつながりを描いた作品が多く、カポーティを彷彿とさせる。成長と老い、希望と諦め、生と死が対比をなし、それぞれが浮き彫りとなる。薄い短編集は束の間の至福のひとときを与えてくれた。

Photo_3 「停電の夜に (ジュンパ・ラヒリ/小川高義)」 (新潮文庫)

文庫にて再読。米国在住のインド女性作家ラヒリが書く短編集は温かく、そして静かな哀しみに満ちている。二度と会えない人への想い、届かぬ気持ち、人と人(特に夫婦)の関係の確かさと脆さ、アイデンティティゆらぐ移民としての暮らし。どの作品もじんと心に滲みる。現代においてはおそらく誰もが移民のごとくアイデンティティを失い、人との関係に喘ぎつつ手探りで生きている。だからこそこの短編集は心を打つ。訳もよかった。

また折を見て他の本も紹介します。

休肝日は13日(年間48日)を敢行。5月は目標達成できるかしらん。ちと危ういかも(今から既に弱気)。

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02.04.2009

3月

Img_2624 この町の桜は満開の頃を過ぎて、花よりも葉の緑が目立つようになってきました。桜はもはやフォトジェニックではなくなったので、今日の花はローズマリーにしてみました。料理に重宝していますが、こんなに可愛い花を咲かせてくれるのです。

3月は「去る」。早いなあ。3月は仕事と風邪と読書でした。風邪以外はいつもとさほど変わんないな。3月の読了本は次の通り。

37/39 03/04   「蘆屋家の崩壊」 津原泰水(集英社文庫)
38/40 03/05   「ファミリーポートレイト」桜庭一樹
39/41 03/07   「シティ・オヴ・グラス」ポール・オースター(柴田元幸) (coyote)
40/42 03/08   「幽霊たち」ポール・オースター(柴田元幸)(新潮文庫)
41/43 03/10   「怖い絵」久世光彦 (文春文庫)
42/44 03/13   「舞い落ちる村」谷村由依
43/45 03/14   「雪のひとひら (新潮文庫)」ポール・ギャリコ/矢川澄子
44/46 03/15   「チャイルド44 上巻 (新潮文庫)」トム・ロブ・スミス/田口俊樹
 /47 03/19    「チャイルド44 下巻 (新潮文庫)トム・ロブ・スミス/田口俊樹
45/48 03/20   「阪急電車」有川浩
46/49 03/21   「淀川にちかい町から」岩阪恵子(講談社文芸文庫)
47/50 03/22   「花ざかりの森・憂国―自選短編集」三島由紀夫(新潮文庫)
48/51 03/23   「鍵のかかった部屋」ポール・オースター/柴田元幸(白水Uブックス)
49/52 03/24   「田村はまだか」朝倉かすみ
50/53 03/28   「冷血」トルーマン・カポーティ/佐々木雅子 (新潮文庫)
51/54 03/29   「レベッカ (上巻) 」ダフネ・デュ・モーリア/大久保康雄(新潮文庫)
 /55 03/30    「レベッカ (下巻) 」ダフネ・デュ・モーリア/大久保康雄(新潮文庫)
52/56 03/31   「なんとなくな日々」川上弘美

16作品18冊。忙しかった割に結構読んだなあ。最近、ハズレはあまりない(ハズレと思ったら中断することもある)ので、どれもそこそこに良かったけれど、印象深かったのは「ファミリー・ポートレート」「怖い絵」「チャイルド44」「憂国」「鍵のかかった部屋」「レベッカ」あたりかな。ここのところ月に1冊は日本と海外のクラシックな小説を読むことにしています。これがなかなか良い試みで、心を動かされることが多いのです。ちなみに「憂国」は衝撃的、「レベッカ」は徹夜一気読み本でした。ちなみに、レベッカは新訳ではなく大久保訳で。そう、ヒッチコックの映画の原作です。

休肝日は平日3日をどうにか死守して、2月も12日、通年で35日を敢行。ちょっとずつ貯金を増やして夏のビール日和に備えるぞ。

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27.02.2009

2月

2月は「逃げる」。早いなあ、明日で2月も終わり。週末は妹が滞在し、あれこれ遊ぶ予定なので、一足先に2月をまとめてみます。

2月も相変わらず読書の日々でした。仕事は大量のものが片付き、確定申告を済ませたのでほっと一息。でも翻訳者にとって最も忙しい3月が目前に迫ってきた。ゆっくりできるのはこの週末くらいかな。

今月読んだ本は15冊。読みたい本、積読本が増えまくっているので本当はもう少し読み進めたいんだけど、今のペースが精一杯です。心に迷いがあると集中力が落ちてしまって、読書が進まないということに気づきました。

22/24 0203 「ラットマン」道尾修介
23/25 0207 「千の輝く太陽」カレード・ホッセイニ(土屋政雄)
24/26 0208 「たまさか人形堂物語」津原泰水
25/27 0208 「ベンジャミン・バトン 数奇な運命」スコット・フィッツジェラルド
26/28 0208 「書店はタイムマシーン」桜庭一樹
27/29 0209 「春琴抄」谷崎潤一郎
28/30 0210 「倒立する塔の殺人」皆川博子
29/31 0211 「少女」湊かなえ
30/32 0215 「イン・ザ・ペニー・アーケード」スティーブン・ミルハウザー(柴田元幸)
31/33 0215 「鬼の跫音」道尾秀介
32/34 2/17 「儚い羊たちの祝宴」米澤穂信
33/35 0220 「麗しのオルタンス」ジャック・ルーボー
34/36 0222 「幻影の書」ポール・オースター(柴田元幸)
35/37 0225 「利休にたずねよ」山本兼一
36/38 0227 「森に眠る魚」角田光代 (←本日読了予定)

今月良かったのは「千の輝く太陽 (カレード・ホッセイニ/土屋政雄訳)」「春琴抄 (谷崎潤一郎)」 「幻影の書」あたりかな。

Photo 「千の輝く太陽」は戦禍に巻き込まれるアフガニスタンで抑圧され、暴力をふるわれ、夢を愚弄される女性たちの物語。久しぶりに本を読んで号泣しました。土屋訳も素晴らしかった。原作はアメリカで爆発的に売れたのだとか。でもアラブな私としては、おさまりの悪さを感じてしまった。この本によってイスラム許すまじ!という風潮があおられ、アメリカによるイスラム攻撃に錦の御旗を渡すようなことになりはしないかと危惧している。人権問題はイスラムに限った話じゃないのだ。

Photo_2 「春琴抄」はいわずもがな谷崎潤一郎の名作。読みたくなって蔵書を探してみたのだけどどうにも見つからないので、久しぶりに赤い表紙を購入してみた。うう、美しくも狂おしい愛の世界。300円で大満足。素晴らしいお買い物でした。

映画で話題の「ベンジャミン・バトン 数奇な運命」は、収録作品も多くコストパフォーマンスのいい文庫で読んだのだけれど、表題作以外は訳にぞんざいなところが散見されてがっくり。挿絵も素敵な絵本仕立てのこちらの本を買えばよかったな。

それでもおおむね今月も良い読書でした。

休肝日は12日でした(今日から連続宴会突入なので、これで打ち止めです)。休肝日も私にとってはこれが精一杯だな~。3月は日数も多いし、夏に備えてもう少し貯金を増やしたいところです。

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25.02.2009

重曹おそるべし

本に耽溺する暮らしを送っていると一週間なんてあっと言う間に過ぎてしまう。どんどん読んでいるけど、読めば読むほどに読みたい本が増えるという読書人のジレンマ。京丸家は本で溢れんばかりです。普段文句を言わないオットも、最近「買うなら文庫本にしといたら」とつぶやくようになりました(反省)。

で、表題の重曹です。今回は驚いたのでここに報告します。以前からエコな掃除グッズとして重曹が良い!という話を耳にしていて、興味津々に買ったもののあまり使いこなせずに5年くらい台所のシンクの下で眠らせてました。ところが!これが大変な優れものだったことに本日ようやく気づきました(遅いって)。ちょっと興奮気味。

我が家のバスルームはタイル張り。床は滑り止めのつもりか、表面がでこぼこしています。そのでこぼこに、拭き取れなかった水分がじわじわと蓄積して黒ずみとなり、15年も経つうちに薄汚れてきました。あれこれケミカルを使っても取れないし、毎朝水分を拭きあげても効果なし。このまま我が家のバスルームは黒ずんだままかあ、と目にするたびにどんよりしていたのです。

そして昨日。いつものように仕事の合間にネットをふらふらしていたところ、お風呂の黒ずみに重曹沸騰水が効くという記事を発見。沸騰したお湯に10%の重曹を溶かしただけ、という簡単なシロモノです。本当に効くのかな。以前「水垢にはクエン酸」という記事を信用して試してみたものの、全く効果がなかったという経験もあるしなあ。とりあえずモノは試しに半信半疑で作ってみて、寝る前にスプレーしてみました。

そして今朝、うわああああ、黒ずんで貼り付いていた水垢が溶けてる。ちょっとこすっただけですっきり。スプレーしてない部分との差が歴然です。ビニール目地の黒ずみも真っ白ぴかぴか。あああ、重曹すまなかった。これまで君の力を疑っていたよ。今日からお風呂あがりのスプレーを習慣づけるとします。

バスルームで驚愕した私は、台所用にも同じ重曹沸騰水を作成し、ガスレンジにスプレーしてみました。あらら、こちらもピカピカです。重曹を使うエコ掃除がブームなわけがようやく判りました。黒ずみに悩んでいる皆さん、重曹沸騰水おすすめですよ~。

***

Photo_2

「幻影の書(ポール・オースター/柴田元幸訳)」

そういう訳で相変わらず読書漬けの毎日です。読む本が多いと、選ぶ本にハズレが少なくなります。自分の好みが明確になるのと、学習するからなのかな。ここのところ、良い本に出会うことが多くなりましたが、2月の読書の中で特に素晴らしかったのがこのポール・オースターの新しい本。

これは再生の物語。入れ子構造となった物語の中で大学教授ジンターが、ジンターが追う俳優ヘクターが、そしてヘクターが撮影した映画の主人公らがそれぞれ絶望の淵から死の淵から再生する。複数の物語が絡み合い大きなうねりとなって主人公ジンターの真の「再生」につながるラストは胸が熱くなり、私自身の生も肯定された思いをしました。まさに心震える読書体験となりました。はぁぁぁ、これだから読書はやめられません。

まだまだ読んでないオースター作品がいっぱいあるという幸せをかみしめてます。柴田訳も素晴らしかった(そして、またオースターの本を買うわけです。いちおう文庫にしておきました・笑)。

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18.02.2009

かの地で

ここのところスーパー読書モードに突入していて、時間を捻出しては本を読むという日が続いています。ここの更新もすっかり途絶えてしまっていました。前回紹介した本が「仮想儀礼」…ということは、その後に読んだ本が既に13冊。さて書評どうしよう。

そんなこんなで、本ばかり読んでいて世間にも疎い生活を送っていましたが、先日イスラエルで作家村上春樹がエルサレム賞を受賞したというニュースはたまたま目にしました。そして、複雑な心境となりました。(以下、少し政治的な話も書くつもりです。お好きではない方はスルーしてください)

私の場合、中東問題に関してはどう転んでもアラブの側。しかしアラブに偏った考えを出来る限り差っぴいても、「社会における個人の自由」を讃えたという賞を今のイスラエルで村上春樹が受賞したということに違和感を感じたのです。その後、ネットであれこれ調べてみたところ、受賞を辞退しろと村上に迫ったり、受賞することを決めた村上はひどいという内容のチェーンメールを送っていたNGOなどもあったのだとか(受賞するかどうかは本人が決めることだから、たとえ同じような違和感を覚えたとしても、そういう行動には賛成できないけどね)。

そして、村上は受賞しました。彼は受賞を辞退するという無関与ではなく、受賞のその席で自らの意見を述べたのです。

http://www.youtube.com/watch?v=4c7BmEJ9ais (受賞スピーチを抜粋したニュース、字幕あり。音が出ます)

http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/26ca7359e6d2d15ba74bcdf9989bee56 (スピーチ原文)

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0902/17/news061.html (関連記事)

村上のデビュー作に出会ったのは10代の頃。以降、ずっと彼の作品を読みつないできました。私は間違っていなかった。

辞退する方が簡単だったはず。敢えて困難な道を選び、かの地でその思いを述べた村上に心うたれました。

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06.02.2009

平日無給休暇

日々のノルマを少しずつ増やして、どうにか一日休みを作った。自由業だからできるささやかな贅沢だけれど、無給休暇です。普通だと、こうやって作った時間に次の仕事を入れるんだけど、今日はあれこれやりたいことをやるつもり。

まず台所を磨きあげる。読みかけの本を読了して、図書館に返却し、届いている本を引き取る。苗もの屋に寄って、春の苗ものをどっさり入手する。その後は本屋でさらに本を買う。そして、待ち遠しかった週末宴会のための食材とワインを調達。今夜は取り溜めた録画を見ながら食事をして、撃沈するまで本を読むのだ。

書いてみただけで、うっとり。さ、台所を磨こう。

***

と、書いておきながら、読了本の紹介が溜まっていたことに気づいた。そうそう、この本のことを書いておかなければ。

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「仮想儀礼〈上〉(篠田節子)」

「仮想儀礼〈下〉(篠田節子)」

特定の信仰のない人間にとって宗教、そして信仰は難解だ。宗教を信じるには、目の前にそびえ立つ壁を越えないといけないような気さえする。人がどのように信仰するに至り、その信仰を深めるのか、それは信じるもののない人間にとって解明されていない謎なのだ。だからこそ、宗教は私の興味を惹く。

金に困った二人が、宗教という名のビジネスを立ち上げる。大きくなる組織、救いを求める人々、そして金にむらがる人々。上下900ページにも及ぶ長編を、息つくことなく一気に読んだ。読み終えて放心した。人間にとって宗教とは、信仰とは一体何なのだろう。宗教は人の想像力から生まれるものなのか。そして、人間に何をもたらすのか。それは果たして幸福なのか。壮絶な物語を紐解きながら、まだ答えの得られそうにもない問いがずっと私の心を捉えていた。

またしても「今年の本」に選ぶべき作品。読書生活、とても充実しています。

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03.02.2009

緑の魔女

鼻が利く。有能な刑事という訳ではなく(すみません)。慢性副鼻腔炎だというのに、匂いに過敏なのだ。自分の嫌いな匂いをすかさずキャッチしては、気分が悪くなる。

悪いことばかりじゃない。数年前、嫌な匂いで目を覚ましたところ、1階のストーブの火が完全に消えていなくて、リビングには恐ろしい匂いが充満していたということがあった。我が家は木造安普請なので2階の寝室まで一酸化炭素が流入したのだけれど、過敏な鼻センサーが気づいたのだった。死ぬかと思った。普通だったら眠ったままお陀仏だ。鼻が利くお陰で命拾いした。

だけど、ほとんどの場合は鼻が利くことが災いしている。ご近所の暖機運転で流れ込む排気ガスの匂い。乗り物の中で漂う柔軟剤の香り。煙草の残り香。苦手な匂いを嗅いではよれよれになる毎日だ。家の中からは、できれば嫌いな匂いを排除して快適に過ごしたいと切望している。

しかーし、どうも気になる。何がって、食洗器用粉末洗剤のフローラルな香りだ。スペースの関係上、調味料と同じ場所に保管しているのだけれど、調味料を取り出そうと扉を開けた途端に匂ってくる。食べ物と同時に匂うには強すぎる。あまりにも人工的だし。市販の洗剤は片っ端から試してみた。でも、どれもこれもフローラルだ。シンク脇の小さな扉を開けるたびに軽く絶望する。

Photoこんな鼻に少なからずうんざりしている私が、行脚に行脚を重ねてようやく巡り会ったのがこの「緑の魔女」。香りは弱いミント。やったーフローラルから解放される!扉を開けてもあの嫌な匂いが立ち上ることがなくて、イイカンジだ。有難いことに、洗った後のもわっとした嫌な匂いもなくなった。さらに言えば、排水溝がピカピカになるのだとか。

食洗器の排水溝を覗く機会はないので、その効果のほどを知ることはなかったのだけど、手持ちの食器用(手で洗う方ね)洗剤が切れた時に、こちらに買い替えてみた。すると、おおお排水のバスケットがぬるぬるしなくなった。これまで石鹸タイプのものを使っていたので、手肌が荒れるかも、と心配していたけど、それも大丈夫みたい。また、普通の洗剤を使っていた人にとっては泡立ちが悪く感じられることもあるそうだが、そういう場合は普通の洗剤を混ぜて使うといいらしい。

排水溝が綺麗になる、というのはどうやらバイオの力で排水の水質がよくなるからなのだそうだ。環境に良いうえに、匂いも臭くなく、おまけに家事が楽になるのなら申し分ない。かくして、匂い対策で選んだ緑の魔女は、排水溝も綺麗にしてくれる優れものでありました。 鼻が利くのも悪いことばかりじゃないのだな。

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「猫を抱いて象と泳ぐ(小川洋子)」

早くも今年の一冊に選ぶべき作品に出会ってしまったようだ。待ち望んでいた小川洋子の新作は、やはり静かな愛に包まれた素晴らしい作品だった。

チェスの駒を置く音だけが響くこの物語の世界では、駒は言葉よりも饒舌で雄弁に語る。リトル・アリョーヒンが異形の唇を持って生まれてきたのは、チェスという語る手段を持っていたから。登場人物は皆印象深く、その静謐な世界の中をずっと漂っていたいと感じる一冊だった。

図書館の新刊到着案内でたまたま目にしてすぐに予約を入れて読んだのだけれど、これは買うべき本だったなあ。

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02.02.2009

1月

ついこの前、お正月早々に風邪引いたーとぼやいたはずだったのに、もう2月。こんなスピードで時間が経っていくのだから、あっと言う間に年を取るのも納得がいく。

1月は本を読み、仕事に励んだ。読んだ本は18作品、21冊。けっこう読んだ。

1    「どこから行っても遠い町」川上弘美
2    「吉原手引草」松井今朝子
3    「ラジ&ピース」糸山秋子
4    「孤宿の人(上)」宮部みゆき
4/5  「孤宿の人(下)」宮部みゆき
5/6  「雲さわぐ」藤井素介
6/7   「孕むことば」鴻巣友季子
7/8    「ゴールデン・スランバー」伊坂幸太郎
8/9    「黒百合」多島斗志之
9/10  「光」三浦しをん
10/11 「テンペスト上」池上永一
11/12 「灰色の輝ける贈り物」アステリア・マクラウド(中野恵津子)
11/13 「テンペスト下」池上永一
12/14 「殺人鬼フジコの衝動」真梨幸子
13/15 「婚礼、葬礼、その他」津村記久子
14/16 「山魔の如き哂うもの」三津田信三
15/17 「猫を抱いて象と泳ぐ」小川洋子
16/18 「ジョーカー・ゲーム」柳広司
17/19 「草祭」恒川光太郎
18/20 「仮想儀礼(上)」篠田節子
18/21 「仮想儀礼(下)」篠田節子

読書ノートに5点満点をつけた作品は「どこから行っても遠い町」「吉原手引草」「孤宿の人」「ゴールデン・スランバー」「猫を抱いて象と泳ぐ」「草祭」「仮想儀礼」の6作品。素晴らしい作品にたくさん出会いました。感想を書いてない本がたまってきたなあ。

休肝日は11日。かろうじてセーフ。夏の暑さを鑑みると、今のうち貯金しておかなきゃいけないところなんだけど、今のところ平日3日というペースがちょうどいい感じです。

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28.01.2009

読書三昧

図書館通いに拍車がかかり、仕事もマッハで仕上げてせっせと本を読む日々。気づくと、前回アップした「灰色の輝ける贈り物」の後に8冊も読んでいて、仕事以外はいかに読書しかしてないかを思い知るのでした。

最近は、読書が忙しいので休肝日もさほど苦になりません。酔っ払ってないと読書が進むから。「飲むか、読むか。究極の選択だ」などと言っていた頃が懐かしい。私も大人になったではありませんか。

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「テンペスト 上 (池上永一)」

「テンペスト 下 (池上永一)」

本屋大賞にノミネートされたそうな。琉球歴史エンタメ・ファンタジー。主人公が二役を演じ、物語はジェットコースターのように展開して息もつかせない。しかし私個人としては、主人公に感情移入できなかったうえ、テンポの速い(ドタバタともいう)ストーリー展開にどんどん腰が引けてきたのですが、幕末の琉球と薩摩との駆け引きを垣間見れたのは収穫でした。

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「殺人鬼フジコの衝動(真梨幸子)」

怖い本が読みたくて、文字通り怖いもの見たさに選んでしまった。だけど怖い話ではなく、嫌な話だった。あくまでも私の嗜好の問題なのですが。冒頭のいじめと暴力の描写でへとへと、覚えのある小学生女子のヒエラルキーにぐったり。殺人鬼となってしまったフジコより、殺人鬼になるまでの経緯の方が重要で、描写も生々しい。ふう。真梨幸子は一部で結構な人気を博しているようだけど、こんなふうに疲弊させてしまうのが、真梨幸子の力なのか。

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「婚礼、葬礼、その他(津村記久子)」

「ポトスライムの舟」で第140回(2008年後期)芥川賞受賞。この「婚礼、葬礼、その他」も139回、「カソウスキの行方」は138回芥川賞にノミネートされている。収録された2作品のいずれの登場人物も、体温が低そうなところが肌に合う。コミカルな表題作はとても楽しく読んだけれど、「冷たい十字路」の方が好みかもしれない。関係ないけど津村記久子と町田康って同じ高校なんですね。

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「山魔の如き嗤うもの(三津田信三)」

山村、子守唄、連続殺人とくれば、そう、横溝正史テイストです。ナツカシー。登場人物が多くて人間関係を覚えるのに時間を要しましたが(←バカ?)、それさえクリアしたら楽しめます。その登場人物の多さもまた、キモなわけです。

上記の本の後に、早くも今年の一冊と呼ぶべき作品に出会ってしまいました。次回はその本について書くつもりです。

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